こんにちは!小説は新しい作家さんとの出会いが楽しみの一つと思っているShoHaru(@Kobeshima8)です。
革命前夜(須賀しのぶ)
冷戦下ドイツの音楽学校に留学した青年が、様々の事態に直面しながら成長する姿が描かれた作品。
革命前夜というタイトルと東西ドイツに分かれていた中での音楽を題材にした青春物語に興味を惹かれて手にした本です。
本を読みながらクラシックを聴くのにはまってしまいました。
👇この記事で書いてある内容
評価
この本を読んで得られること
この本を読むのにおすすめな人
この本を読むのにおすすめしない人
感想(ネタバレなし)
まとめ
評価
5/5(☆☆☆☆☆)
クラシック音楽の描写が素晴らしく、冷戦下ドイツの状況を知るだけではなく、ストーリーも重厚で面白く、素晴らしい小説でした。
クラシックを全く聞かないので普段であれば読まない分類の作品なのですが、本作で考えを改めさせられました。
得られること
・東ドイツの当時の状況
・クラシックが持つその曲の意味合い
・歴史を学ぶことの大切さ
おすすめな人
・クラシックを聴かない人
・冷戦下東西ドイツの時代に興味がある人
・サスペンスや青春文学が好きな人
おすすめしない人
・クラシックを知り尽くしている人
感想(ネタバレなし)
濃密で重厚な文章の先に、優しい風が吹いてくるような感覚にさせられる作品でした。
クラシックの描写が丁寧にされていて、途中からクラシックを聴きながら読め進めることにしてしまったほど。(バッハが中心ですが)
あらすじをざっくりと書くと、
【あらすじ】
バッハを敬愛しピアノを演奏する主人公が、昭和の終わった日に東ドイツの音大に留学をする。
期待とは裏腹に、東ドイツは社会主義であり生活や音楽が想像していたものとまるで違っていた。
音大には、主人公と同じように個性や才能に溢れた留学生もいるが、それぞれの国のおかれた状況によって背負っているものの違いに驚かされる。
そんな時に、教会で聴いたパイプオルガンに感動し、弾いていた美しい女性(クリスタ)を探すようになる。
しかし、彼女はシュタージ(国家保安省)の監視対象であり、主人公はよそ者扱いされる。
東ドイツの国民は経済的に厳しく西(資本主義)へのあこがれが強いことも主人公は知る。
彼女もその一人だった。
主人公は音楽を通して様々な人と交流をしていくが、その中にも東ドイツの厳しさを何度も味わうようになる。
シュタージとは言わば国の監視役のことです。
社会主義であった東ドイツでは国を非難するような人物に対して厳しい措置を取っていたそうです。
西ドイツとの経済状況の違いが大きく、東ドイツ民はベルリンの壁を越える憧れを抱いていますが面に出すことは許されません。
それを一番表しているのは、クリスタが言った、
「この国の人間関係は二つしかない。密告するかしないか。」
に集約されていると思います。
わずか約30年前の東ドイツはそのような国だったのです。
ストーリーは、そんな東ドイツをメインに描かれています。
強烈に印象に残ったのが、天才ヴァイオリニストであるヴェンツェルです。
ハンガリーからの留学生である彼のヴァイオリンは、伴奏をする演奏者の音を飲み込みんでしまうことが多々ありますが、伴奏をした演奏者はヴェンツェルの音を忘れることができなくなるほど惹かれてしまいます。
そして、性格も強烈で、自分の意志は絶対に曲げません。
正直、僕がクラシックを聴いていても音の違いは分からないのですが、クラシックに明るい人からすると、こういった天才が本当に存在することを理解できるんでしょうね。
主人公がクリスタと出会い成長していく青春の話、重い歴史、圧倒的な音楽の描写といった内容が絡み合ってストーリとして楽しめる作品です。
更に、歴史というのは間違った方向に進んでいても気付かない、もしくは気付いていてもそれを正すのが如何に難しいかを感じました。
だから、過去の歴史から失敗や成功を学ぶことの大切さや、生きているひとりひとりに歴史があり、生きる環境その人物に大きな影響を及ぼすんだなと学びました。
そして音楽の素晴らしさも。
まとめ
エンターテイメントとしても面白く、重厚な印象の内容とは違って、テンポよく読んでいけて、最後には清々しい気持ちになれる小説です。
革命前夜というタイトル、東西ドイツ、ベルリンの壁、というキーワードから分かるようにベルリンの壁が崩壊するまでの様々なストーリーと音楽を通して、東ドイツの過酷さやそこに関係する人々の決意を感情を揺さぶる文脈で表現されています。
是非、「革命前夜」を読んで東西ドイツの歴史や音楽を感じながら、エンターテイメントとして楽しんでみてください。
コメント